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斎藤征義記念 宮澤賢治ライブラリ『虔十庵(けんじゅうあん)』開設。

5月28日。

この地に遺るもの。
…そして林は虔十の居た時の通り
雨が降っては、すき徹る冷たい雫をみじかい草にポタリポタリと落し、お日さまが輝いては新らしい綺麗な空気をさわやかにはき出すのでした… 宮澤賢治作「虔十公園林」より
日本語で書かれた文章の中で最も美しい、そして日本文学史上、最も優れた末文の一つだと思います。
世界はいつも私達の前に瑞々しく広がり、開いている。
触れるたびに小学生の頃と同じ感動が今のわたしに蘇ります。そしていつも新たな涙に満たされるのです。
先週の日曜日は99年前、宮沢賢治が苫小牧に滞在した日でした。しとしと降る雨の中、斎藤征義記念 宮澤賢治ライブラリ 虔十庵(けんじゅうあん)は開庵しました。虔十が好きだった雨の日です。誰にも気兼ねせず、はあはあと息を漏らし、体を震わせ、自然の美しさを喜べるから。
27名の参加をいただきました。故斉藤征義氏夫人啓子さん、娘さんのみね子さんもいらしてくださいました。
第一部 朗読会「虔十公園林」それは美しい時の流れでした。小関一子さんの朗読と五十嵐泰子さんの楽器演奏のコラボは、わたしの心を大きく開いてくれました。終演後、頬を伝う涙を拭わずに皆さんの前に出ても、何の気恥ずかしさもありませんでした。
第二部 読書会では啓子さん、みね子さんも交えて、この作品について、そして斎藤征義さんが残したものについて語り合いました。
「夫は最初から賢治に傾倒していた訳ではありません。宮澤賢治展を北海道で初めて開催していく様々なご縁の中で深まっていったのだと思います」
「ご多分に漏れず、娘を甘やかした父でしたが、困難にぶつかっても追求し続ける時、必ず道は開ける、そんな言葉が心に残っています」
第三部 虔十庵お披露目。斎藤征義氏が私財を投じて集め続けた宮澤賢治の書籍1700冊。それは故人がこの世に懸命に生きた証。嘲られても虔十が植えた杉林がこども達の美しい心を育んだように、斉藤さんが遺した本は、これからも多くの人の心を満たし、学びと語り合いを生むに違いありません。
「あなたの生きた証はきっと残る」
そんな想いを込めて、虔十庵と名付けました。
満たす。学ぶ。語り合う。
虔十庵はそんな場所です。
あなたの訪れをお待ちしています。